輪島塗とは

「輪島塗」とは

「輪島塗」とは、石川県輪島市で取れる珪藻土(輪島地の粉)を使って、輪島の職人の手によって生産される漆器です。

漆器の最高峰といわれ、実物を見たことが無くても「輪島塗」という名前を聞いた事がある人は多いのではないでしょうか。残念ながら、その名称を聞いただけで「高級品で値段が高い」という認識が多いのですが、実は輪島塗を完成させるためには 全部で 100以上の手作業での工程があり、多くの職人の手間がかかってるのです。

ここでは、そんな「輪島塗」の歴史と特徴について解説していきたいと思います。

輪島塗に少しでも興味を持って頂けると幸いです。

「輪島塗」の歴史

輪島塗の起源は 今から約600年前(1394年から428年の応永年間)に 現在の和歌山県北部にある根来寺(ねごろじ)の僧が伝授したと言われています。そして 江戸時代中期以降に発達し 現在の技法が確立されました。

輪島塗は 昭和50年に国指定の伝統的工芸品に、昭和52年には重要文化財に、昭和57年には輪島塗の製作用具が有形民俗文化財に指定されました。そして 美術工芸品として日本一の漆器と称されるようになりました。

重要文化財は 日本に所在する建造物、美術工芸品、考古資料、歴史資料等の有形文化財のうち、歴史上・芸術上の価値の高いもの、または学術的に価値の高いものとして文化財保護法に基づき日本国政府が指定した文化財を指す。

(引用元:重要文化財 – Wikipedia)

「輪島塗」の特徴

輪島塗は、下記の様な特徴から「堅牢優美な漆器」と称されています。

・原材料となる気や漆すべてが自然素材

・輪島特産の「輪島地の粉」を使った堅牢な下地

・「布着せ」による強度の保持

・漆を塗り重ねる本堅地作業での堅牢性の重視

・100以上に及ぶ丁寧な手作業による工程と、幾つものスペシャリストによる伝統の技

・「蒔絵」「沈金」「変わり塗」などの巧みな加飾の技

・優美で滑らかな独特の質感

・布着せ本堅地下地仕上げのため修理が可能

・大腸菌などへの 抗菌作用を保持

輪島塗で使われる「漆」とは 天然素材からなるため、地球環境に優しい無公害の塗料です。

そして原材料となる木も もちろん天然素材の為 自然の恵みと職人の技が生んだ傑作というわけです。

そんな輪島塗を作るための総工程は、下地作業から始まり 全部で100以上あります。

基本的な作業を大きく分けると「手塗り」「手彫り」「手描き」の3つからなり、塗りだけでも 36工程あるのです。

まずは「手塗り」である「下地作業」について解説します。

輪島塗は、木地に下地を厚く施すことにより、丈夫さと美しさを両立させています。

まず、微生物の化石からなる珪藻土(けいそうど)を水で練って素焼きし、細かく砕いたもの(輪島地の粉)を漆に混ぜて塗ります。そして、木地に布を貼る「布着せ」と呼ばれる作業を行う事で、椀の縁や高台、箱物の角など傷つきやすい所を補強します。これらの作業を3~4ヵ月かけて行ってます。この独特の下地こそが輪島塗の最大の特徴と言われています。

塗りの後には必ず乾燥と研ぎ作業が発生しますが、乾燥方法は「湿気で乾燥させる」という珍しい方法です。

続いて「手彫り」作業が発生します。手彫り作業は、布着せ本堅地で塗り上げられた器に、模様の基礎となる下絵を彫っていく作業を指します。長い線を彫らなければならないため、高い集中力を要します。

最後に「手描き」について解説します。手描き作業の代表的な方法は、「蒔絵(まきえ)」と呼ばれる技法です。蒔絵(まきえ)とは、漆器の表面に漆で絵や文様、文字などを描き、それが乾かないうちに金や銀などの金属粉を蒔くことで器面に定着させる技法を指します。漆が乾いたら研ぎ出して、描いた模様を浮き出させるという、まさに職人技が特徴です。

なお、蒔絵のための「蒔絵筆」はネズミの脇毛が使われています。漆は天然の最高の接着剤と言われ、実は陶器等の破損や修理などにも広く使用されています。その粘着性から、蒔絵筆には細くて腰の強いネズミの脇毛が良いとされているんです。中でも、海上生活によって、あまり動き回らない、毛の傷みが少ない、船ネズミが最高と言われており、空気中に塩分が含まれているのも良いとも言われています

輪島塗は、こうした一つひとつの作業に、職人の思いが込められています。

そして、輪島塗にはもうひとつ、大切な特徴があります。
それは修理が可能ということです。
輪島塗が修理できることは、意外に知られていないことかもしれません。
しかし、修理をすることで、一つの器をお子さまからお孫さまへと受け継ぐことができます。
普段使いができて、三代使える芸術品というわけなんです。